多くの店で会員カードが作成されていますが、そのデータを活用できているでしょうか?
単なる買い物ポイントだけで終わっていれば大変もったいない使い方です。
POSレジ等と連動し会員データと購買履歴がリンクされていれば、それを使って費用対効果の高い対策を講じることができます。
履歴を元に、顧客別の購買額やリピーター度等を判別することで、今後顧客個別にどういう対応をとれば良いかが見えてきます。優良顧客にはさらに手厚いサービスを行い、そうでない顧客に対しては優良顧客に引き上げるための施策を講じます。広告媒体としても、すべての人に同じメッセージを送るチラシではなく、顧客に合わせたメッセージをDMで送るような効果的な方法を使うことができます。
さらに、優良顧客が感じている店の評価ポイントを調べることができれば、それを元にさらなるサービス改善にも活かすことも可能です。
これらを事例を元にご紹介します。
【 事例 洋菓子専門店 】
プロフィール ~ ロールケーキが人気の繁盛店 ~
大都市近郊にあるカフェ併設の洋菓子店。地元では人気の高い繁盛店で、ギフト需要から日常買い用途まで幅広く対応しています。
特に、コンテストでの入賞経験もあるパティシエがつくる、季節のフルーツをふんだんに使ったロールケーキが人気です。経営課題 ~ 競合店出店による売上、利益の低下、顧客離れ ~
昨年同市内に出店した競合店の影響を受け、売上がじりじりと低下してきています。競合店はこちらの主力商品のロールケーキをよく研究しているようで、よく似た商品を販売されたことの影響が大きいとみられ、上得意客の売上も減少しています。
この売上減少で商品回転率も下がった為、在庫ロスも増加気味となり、放置すると深刻になりかねない経営課題といえます。<優良顧客化をこのように進めました。>
1.どんなデータから?
顧客の購買データは、そのままでは価値はありません。大事なのは次の3点を把握することです。
- 最新購買日(R Recency)
- 累積購買回数(F Frequency)
- 累積購買金額(M Monetary)
※過去1年間
このR、F、Mというデータを得点化し「顧客の優良度」を測る中心指標として活用します。
RFM得点はその範囲によって、特徴と取るべき対策があります。さらに、別途アンケートの実施が必要になりますが、顧客の思いとRFM得点の両方がわかれば、得点を向上させるヒントがさらに見つかるかもしれません。
これにはRFM分析と重回帰分析という方法を用います。
2.何がわかる?
2-1.顧客の優良度合い
RFMを得点化する場合、R、F、Mそれぞれ5段階で得点をつけて合わせます。得点は最低111~最高555となり、同得点に複数の顧客が位置づけされる場合もあります。
RFMの判定例と得点の付け方
R(100の位の得点)+F(10の位の得点)+M(1の位の得点)
Rが100の位の得点となっているのは、最新購買日が最も重視されるためです。購買金額の順位が3番目なのは、例えば、いくら購買金額が高い顧客でも、最近は全く来店していなければ他店にスイッチしているかもしれず、もはや優良顧客ではないかもしれないからです。
優良顧客の条件としては、まず自店に最近来店しているかが重視されます。
RFMの一般的な見方は次のようになります。
- Rが高いほど、将来の収益に貢献する可能性が高い。
- Rが低ければ、FやMが高くても離反している可能性が高い。
- Rが同じなら、Fが高いほどリピーターである。
- Fが低ければ、他社に奪われている可能性が高い。
- Rが同じなら、FやMが高いほど購買力がある顧客
- RやFが高くても、Mが低い顧客は購買力が低い
<事例でのRFM例>
2-2.優良客化に影響を与えていること
顧客別にRFM得点の判定を行った後、アンケートを実施し店への印象等を聞いた結果と照らし合わせることで、優良顧客に影響を与えているのは何かを探ることができる。
ここでは重回帰分析という方法を使っていますが、これは、複数の要因が結果にどう関係しているかを式で表す方法です。ここでは、こんなことができるツールということだけ覚えておけば良いでしょう。計算はエクセルで数値を当てはめるだけでできるようになっています。
3.どう活かす?
RFM得点のランクに応じて取るべき対策として、次のような例が挙げられます。
- RFM上位ランク顧客(433~555 ファン、常連)
挨拶:定期的なごあいさつ、案内状で手厚い待遇であることを伝える。
特典:プレミアム顧客としての特典を提供する。
紹介:他の顧客を紹介してもらうよう働きかける。 - RFM中位ランク顧客(311~422 離反しかけ、目的買い)
ファン化:来店動機、購買動機を高める為の顧客体験づくりは何かを探る。
リピーター化、他商品購買:季節ギフト、単品の案内、クーポンを推奨等でリピーター化を図る
リピーター化、客単価アップ:お試し買いの顧客(いちご大福等の単品買い)→高単価商品を薦め、リピーター化を図る - RFM下位ランク顧客(111~255 休眠、ついで買い)
客単価アップ:新規商品、ギフトおすすめ
購買頻度アップ:購買頻度を高める為、再購買を促す。有効期限付きクーポンを送る等。
復活:新商品の案内、クーポン等で、復活するように対応
顧客体験の充足:推奨客になる為に欠けているものを探る。
また、RFM得点が高い顧客属性は、商圏1km圏内の近隣に居住する年齢が高めの女性であることがわかりました。
顧客意識としては従業員の対応への満足感が高いということも判明しました。ここから、従業員の接客研修実施等にも取り組む必要性が出てきました。