資金繰りが経営にとって何よりも重要なのは言うまでもありません。「勘定合って銭足らず」と言われるように、黒字経営であっても資金がショートし銀行取引が停止になれば倒産です。
菓子・パン店は日々現金での売上が多い一方で支払いは遅いので、資金繰りとしては余裕がある方の業種です。しかし、それが資金繰りへの意識を鈍くし、赤字になってから慌て始める傾向が多いのも事実です。
日頃より資金繰りを改善する努力を続け、経営の安全度を高めておくことが重要です。
資金繰り改善を考える場合には、短期施策と中長期施策に分けて考えます。
資金繰りに最も影響が大きい売上は、対策を講じても効果が出るまでにある程度の時間が必要ですので、中長期施策として取り組むことになります。安易な安売りは短期的に売上を押し上げ資金繰りも一時的には改善しますが、結果的には経営を悪化させます。
短期施策としては、コスト削減や借入のリスケジューリング(返済条件の見直し)、仕入条件見直し等からできることを探します。ただ、金融機関や取引先に対して、借入や条件の変更を安易に申し出ると、経営への警戒心をあおり与信評価を落とす可能性がありますので、十分な準備が必要です。
1.コスト面からの対策
まず年間の勘定科目別に見て、前年からの伸びや業界平均水準等から、改善可能な科目のあたりをつけます。そのうえで、月別の補助科目別に一つずつ見ていき、削減する科目を決定します。
決定した後は削減目標値を決めて実行スケジュールを立てます。
- 原材料(品目)
小麦粉、砂糖、油脂等の原材料、包材等の副資材等のリストを元にコスト削減可能な品目を抽出。
ただし、主原料での代替品検討は、商品の品質とのバランスがあるので慎重に行う。 - 原材料(調達方法)
仕入業者からの見積もりを定期的に見直す。(1年に1度は必ず全品目の見積もりを取得する)
新規仕入業者を発掘し既存業者との相見積りを実施する。
(あってはならないことだが)仕入担当者と業者の癒着による不利益な取引にも注意。 - 人件費(社員給与、パート・アルバイト代)
社員のパート・アルバイト化。
店別、時間帯別の適正人員配置の見直し等による余剰人件費削減。
経営者以外がシフトを組んでいる場合は人件費の増減を随時チェックし、人員の余剰を未然に防ぐ。 - 賃料
テナント出店の場合、賃料引き下げの交渉実施を検討する。
入居時の条件が絶対ではない。経済情勢と賃料相場の変化などに合わせて、契約更新時の交渉で削減させることも可能。 - その他
費用別の予算を設け、予算内での支出に収まる管理を行う。
<コスト削減 例>
コスト削減効果を売上に置き換えると、その重要性がよくわかります。
2.資金面からの対策
資金面で重要なのは、キャッシュフロー(利益+減価償却費)がどの程度確保できているか、キャッシュフローで借入金の返済ができているかという点です。
借入金が返済できていなければ、現預金を食い潰し経営体力が徐々に奪われていきます。資金流出額を減らすような対策を講じます。
- 借入返済条件の見直し(リスケジューリング)
既存借入先の金融機関との交渉による、毎月の支払額が減額になるような、借り換え、元本返済年数の長期化、金利の見直し等。
金融機関と交渉する為には、条件変更による効果と業績改善の見通しを説明した事業計画書が必要になる。コスト削減や今後の売上向上の対策を具体的に説明することで金融機関の不安を払拭する。 - 新規借入先の開拓
既存の金融機関が交渉が進まない場合、今まで付き合いのない金融機関に話を持ちかけてみる。
金融機関によって取引方針は同じではなく可能性は有り。 - 仕入条件見直し
原料仕入サイトの長期化。相見積もり等と合わせて行う。
<資金繰り改善 例>
<資金繰り改善フロー 例> クリックで拡大します(PDFファイル 別ページ)