あなたの店はお客様に十分な満足を与えていることができているでしょうか?
よく言われる「顧客満足度」ですが、これに真剣に取り組み改善させれば、大きな売上向上も期待できるようになります。これは競争が厳しくなる一方の業界のおいて、業績を安定させるために重要なテーマですので、ぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
ただ、ここでの顧客満足度は「当店の接客、商品に満足していますか?」という質問から得られるものではありません。真の顧客満足度は、顧客から店への信頼感、親密感、愛着度を知ることで明らかになる、顧客ロイヤルティ(忠誠度)から生まれます
。これを調べるには、お客様へ次の質問を問いかけます。
当店を、友達や知り合いにすすめようと思いますか?
この質問に対して「思う~思わない」の10段階で回答してもらうことで、真の顧客満足度を知り、業績改善のアイデアの発見に繋げることができます。
1.なぜこの質問が良いのか?
非常にシンプルなこの質問は内容からも明らかなように、顧客が、店や商品が良いということを口コミで広めてくれるかを問いかけるものです。
昨今のネット、SNS(フェイスブック、ツイッター等のソーシャル・ネットワーク・サービス)の普及から、口コミが広がる速度は飛躍的に上がり影響力も大きくなっていますが、この質問はその口コミ自体の可能性をダイレクトに問いかけるもので、非常に効果的です。
口コミをを問うこの質問が効果的なのは、次の3つの理由からです。
1-1.問いかけのハードルが高い質問
この問いは「この店の商品やサービスを、あなたの親しい人たちにすすめても喜んでもらい、恥をかかない自信がありますか」と聞くものです。
口コミの行動まで起こすかという質問は、単に「満足していますか」という質問よりも数段高いハードルで、回答者に瞬時の厳しい判断を迫ります。それによって出された結果は、自社の商品やサービスの本当のファンのお客様を選び出します。
1-2.収益に繋がりのある質問
「親しい人に紹介する」という回答をするお客様は、人にすすめてくれて、自分もまた買いますよと言っていることなので、収益に貢献してもらえる可能性が高くなります。
また、重要なのは理由も同時に聞くことで、これによって収益につながる具体的アイデアや収益を阻害している原因を発見しやすくなります。多くの企業調査からこの関係が明らかにされています。※1
※1
ベイン&カンパニーの調査で、顧客の再来店や継続購入、友人への推奨、収益と最も相関の高い指標と判明している。シンプルさと高い効果から、近年多くの成長企業で活用が進む。
(下グラフ)和菓子製造小売店調査による顧客収益と満足度の関係
1-3.シンプルで分かりやすい質問
5~10問程度の簡単な質問なので、お客様から回答してもらいやすくなります。一般的にアンケート調査は、質問項目が多く時間がかかるほど回答率が下がります。
簡単な質問なら回答結果の分析も容易で、目的に思考を集中させることができるので、具体的アイデアも出やすくなります。
2.質問に回答してもらうまで
2-1.顧客アンケートの設計
顧客に回答してもらう為に、この質問を含めた顧客アンケートをどのようにして作成して実施していくのか組み立てを考えます。
- アンケートの目標設定
まず、依頼数と回収数目標、回収率を定めます。回収率は10~15%程度が一般的です。
アンケート回収後の短期的目標は、業績改善に繋がるアイデアを引き出すことです。その結果を元にした中長期的目標は、顧客満足度指標の改善し業績改善に繋げることです。 - アンケートの流れ(依頼~回収)
どのように顧客へ案内し回答してもらうのか、その流れを考えます。 - アンケート回答方法
ネットでのアンケートをおすすめします。アンケート用紙に記入してもらうという方法ももちろん可能ですが、後の集計作業に時間とコストがかかり、回答数が多い場合は大きな負担になってしまいます。一昔前ならその方法しかありませんでしたが、現在はインターネットを利用することでより効率的に実施することができます。
顧客が高齢の方が多い場合は大丈夫なのかと思うかもしれませんが、インターネットの普及率も高まり(平成24年末での世帯普及率79.5%)、最近はスマホやタブレットを使う高齢の方も増え大きな問題ではありません。実際に和菓子専門店で実施した際にも多くの方から回答を得ることができています。 - アンケートの作成
アンケートは次の2つの質問が中心です。
「 当店を、友達や知り合いにすすめようと思いますか? 」を10段階で問う質問
「 その理由 」を自由コメントで書いてもらう質問他は購入店や性別、年代の属性情報になります。商品や接客の個別について尋ねる質問もあってもかまいませんが、質問数が多くなると回答率が下がるので10問以下に止めておきます。
また、ネットアンケートをどうやって作成するのか?については、これはグーグルで無料作成できるサービスを活用できます。URLが長くなる問題はありますが、QRコードに変換したり、一旦自社サイトに誘導しそこからアンケートページにリンクを貼る等で対処することができます。
このアンケート作成方法は今後詳しくご紹介していきます。 - アンケートの依頼
一般的には店頭でお買い上げ時に案内チラシを渡すのが確実な場合が多く無難です。また、催事と組み合わせたりクーポン券等を配布すれば回答してもらいやすくなります。
多機能POSレジを導入している店では、レシートにアンケート依頼文を入れることができる場合もあります。コンビニやコーヒーチェーン等ではよく用いられている方法です。
スターバックスでは無作為にレシートにアンケート依頼が出て回答者には何でも商品が一杯無料になるため、これが「当たりレシート(右)」と呼ばれ人気を呼んでいます。
さらに、ポイントカード等の会員がいて告知する手段(メール等)があればそれで告知することもできます。最近ではスマホアプリのLINEを使い一斉告知をしている店もありますので、そのような手段を使うのも良いでしょう。
2-2.店頭配布用アンケート用紙の作成
店頭で配布するアンケート案内は、単独チラシまたは他の案内と一緒に掲載する等で作成します。
下のサンプルは単独ですが、アンケート回答者にクーポン券を渡すキャンペーンとしています。
2-3.アンケートの実施
準備ができたら顧客に案内していきますが、事前に販売員の方にはしっかり説明しておきます。ただ案内用紙を配るだけでなく「なぜこの用紙を配るのか」「これで何をしようとしているのか」を理解してもらいます。
アンケート回収後にはその結果を用いて店舗や接客の改善点を見つけていきますが、それを実行する中心は販売員の方です。その為、アンケート実施段階から取り組む意味をしっかり把握して改善に中心にいることを意識してもらいましょう。
3.回答結果の活用
この質問の回答結果を漠然と眺めているだけではもちろん何も起こりません。せっかく実施したアンケートを活かすも殺すもその後の分析と活用次第です。
3-1.分析結果の見方
質問の回答結果から顧客満足度を測るため「NPS(Net Promotere Score)※2」という指標を算出します。
これが顧客満足度を示す中心指標となります。
調査を複数店舗で実施した場合は、NPSは全店と各店舗別で算出します。
NPS(%)=推奨客比率(%)-批判客比率(%)
同時に、採点理由として自由に書いてもらうコメントからは、満足度が高い顧客のコメントと低い顧客のコメントを注意深く見分け、顧客満足度に影響している顧客体験が何なのかを洗い出します。
膨大な量のコメントとなる場合、テキストマイニング※3による文章解析も併用する等で傾向を探ることができれば、より効果的に顧客体験を抽出できます。
こうして探し出すのは、例えば接客時の言葉づかいや振る舞いかもしれませんし、店内の見づらい陳列等かもしれませんが、収益につながる良い顧客体験か収益を損なっている悪い顧客体験を導き出すことができます。
※2ベイン&カンパニーの考案による指標
※3文章を単語レベルに分解し、出現回数や単語同士の相関関係を解析する手法
3-2.活用方法
顧客満足度の現状を分析した後は、それをどう改善していくか活動方針を決めます。
顧客体験と現場での実施状況に応じた対策の方針は以下のようになります。
まだ一部の現場でしか みられていない |
既に多くの現場で みられている |
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顧客満足度を上げている顧客体験 |
<今後の期待> 現場全体に広めていく |
<収益の原動力> さらに定着させる。 |
顧客満足度を下げている顧客体験 |
<悪い芽> 特定の人、店舗だけで起こっている為、他に広めない。 |
<足かせ> 悪い慣習となっている可能性もある為、最優先で対処し解消する。 |