売れる店舗デザインは内装・ディスプレイが違う（和菓子屋）

出店での店舗設計・デザインにおいて業者選択を間違ってはいませんか？
図面を作成できて、そこそこお洒落なデザインを提案できるならどこでも良いとか、付き合いのある地元の建築業者に頼めば何とかなるとか、安ければどこでもいい等と思っていないでしょうか？

もしそう考えていれば、間違った業者選択をしている可能性が大きいと言わざるを得ません。
建築業者や設計事務所には得意な分野と不得意な分野がありますが、仕事が欲しいので大抵の仕事は引き受けようとします。しかし、パン屋やケーキ屋、和菓子屋を得意分野として専門知識を持っている業者とそうでない業者では特に内装やディスプレイ等において出来栄えに大きな差があります。これは売上の差となって表れます。菓子づくり、パンづくりでプロとセミプロの商品が違うのと一緒だと考えてください。
商圏分析と同じように設計の機会は出店前の一度だけですので、間違えない選択をしましょう。

ここでは、専門業者（株式会社ロケット・パンチ）が手掛けた和菓子店舗、和洋菓子併売店舗の事例をご紹介しますので、今後の店づくりと業者選択の参考にしてください。

1.遠州菓撰玉華堂　今之浦本店（和菓子・洋菓子併売　路面店）

静岡県磐田市今之浦4-18-10
「新規顧客の開拓」「ブランドイメージの向上」などによる売上アップを目指す為、まず現状の店舗の問題点や改善ポイントを洗い出し、改装の狙いや目的を明確にするところからスタート。ビジュアルのコンセプトは「和の伝統的な形式美と西洋の革新的な美意識との融合」として「日本人が創る木造洋館」をイメージしています。
店内全体のイメージを刷新することに加え、洋菓子厨房とアントルメケースを新設して洋菓子コーナーの強化が図られています。また、一見しただけでは商売の内容がわかりづらかった店舗外観は、「建物自体を大きなサイン」と捉え、幹線道路を走る車からの視認性向上を意識しています。


和菓子コーナー壁面の漆喰にロゴマークが浮かび上がります。	洋菓子コーナー木造洋館のイメージでクラシックな雰囲気です。


【外観　改装前】　訴求力に欠け、商売や商品がイメージしづらい印象です。	【外観　改装後】縦格子で和を印象付け、建物全体で目をひくように意識しました。（ページ上部は夜の外観）	幹線道路に面した外観には、商品写真をあしらった特大パネルを設置。車から一瞬で菓子専門店だと認識できるようになっています。

【店内　改装前】　デザイン的に少し時代を感じさせ、個性が表現しきれていない印象。	【店内　改装後】天井に擬似の梁をつけ、柱の色目もシックな色調に。日本人が創る木造洋館のイメージです。	平台で販売する商品のイメージをディスプレイBOXで表現しています。

和のギフトケースはシックな色彩の木目に銅の金物装飾を施し、ケースに個性を与えます。	和菓子コーナーの欄間では、店名の文字を縦横に組み合わせて欄間の模様にしました。少しの遊び心です。

2.千壽庵吉宗　押熊店（和菓子　テナント店舗）

奈良県奈良市押熊町942-1

国産の本わらび粉を使ったわらび餅が人気の和菓子店「千壽庵吉宗」が、伝統に照明や陳列での新しい感性を融合した斬新な店舗を郊外に出店。「本店の白壁に瓦葺きの蔵の意匠を踏襲」する為、白壁に見立てたパラペット（店舗の正面の上方に取り付ける壁）に瓦を載せることで本店イメージと店の存在感を両立させています。
内観でも、本店と同様の意匠の朱色の壁に黒い柱に加えて、壁面に間接照明を多用し、”和モダン”の雰囲気を演出しています。ショーケースには16尺（4.8m）を採用。


ギフトと休憩コーナーわらび餅とお茶をいただきながら、商品を吟味できます。	休憩席


16尺のギフト内のディスプレイは、小物などで季節感を演出しながら、商品の特長を活かした個性的な陳列でお客様に商品のイメージを伝えます。	ギフト商品は個包装された商品が多く、どんな商品か特徴がわかりづらくなります。商品のイメージや特徴をわかりやすくディスプレイすれば効果があります。	単に商品パッケージをギフトケースに並べるだけでは購買意欲が湧きづらい為、どんな特徴を持った商品なのか、お客様の興味を引くディスプレイが必要です。

ギフトケース内には季節感を取り入れます。お客様の目を楽しませることも演出の一つです。	看板商品のわらび餅には、別立てのショーケースを用意。本物志向をイメージ的に表現しています。	以前の店で使っていた木の看板を活用。伝統の趣を表現しています。

3.御菓子司寶屋遊亀あまがさき阪神百貨店（和菓子　インショップ）

兵庫県尼崎市潮江1-3-1 ココエあまがさき阪神百貨店1F

ＪＲ尼崎駅北側の複合商業施設COCOE（ココエ）の中核施設である、あまがさき阪神百貨店に老舗和菓子店が出店。
顧客の囲い込みを狙う為の同一商圏内での３店舗目の出店です。エスカレーター横に設置した平台のディスプレイで洋菓子の要素を取り入れ商品のデイリー性を訴求しています。


存在感を放つ看板や石材で仕上げたケース腰部によって、老舗和菓子店ならではの格式の高さを表現した店舗正面。	エスカレーター脇の平台は、人気商品の「神輿」や季節商品など、賑わい感のあるディスプレイで和菓子のデイリー性をアピールしています。


平台の横に設置した冷蔵ケースには、洋菓子の要素を取り入れた限定商品のどら焼きやロールケーキを陳列しています。	人通りが多いエスカレーター横の平台では、実際に使っていた蒸篭を利用した商品ディスプレイが注目度抜群です。	看板では四方にあしらった金具や刻印で老舗和菓子店の格式を表現しており、壁面には尼崎に因んだ謡曲をあしらっています。

カステラや最中などの贈答用詰め合わせ商品は、左手のショーケースに陳列。老舗ならではの幅広い品揃えが魅力です。	３店の老舗店が並ぶ通路のコーナーには、季節感のあるディスプレイを施した平台を設置し、他店との違いを演出しています。	ショーケースの腰パネルは、薄い石材を重ねた面を表面に出して仕上げることで、個性的でありながら高級感のある印象に仕上げています。