あなたのお店では消費者の要望に応えた新商品開発を行っていますか?
すべての商品にはライフサイクルがあります。売れ始めてから人気が定着する商品もあれば短命に終わる商品もありますが、どの商品も似たようなライフライクルのカーブを描きます。
そして定着したヒット商品が売上の大部分を占めていても、徐々に売上は落ちていきます。競合商品の登場や顧客の消費志向の変化等理由は様々ですが、陳腐化しない商品は世の中には存在しないのです。
その為、常に次の主力商品となり大きな売上を狙えるような新商品開発を続けなければいけません。
新商品を開発する中心は、作り手である職人さんであることは間違いありませんが、その一方で、様々な商品が既に登場しており顧客ニーズが多様化している現在は、作り手のアイデアだけで新商品を発想し続けることが難しくなってきています。
作り手には、商品開発手法のオプションを増やしアイデアの源を広げることが求められるのです。
そこで今回は、顧客の意見を積極的に取り入れた商品開発として、アンケートで商品への顧客ニーズを探る手法を、事例を元にご紹介します。
【 事例 和洋菓子専門店 】
プロフィール ~ 老舗の繁盛店 ~
地方都市で10店舗の和洋菓子店を経営しており、本店に併設した工場で製造された商品を各店に配送しています。郊外型ロードサイドの大型店舗を中心に、他は小規模な店舗が中心です。店の商品は贈答品で使わることが多く、長年にわたり顧客からの支持が厚く、地域一番店としての地位を確立してきました。現在、11店舗目の出店を企画中です。経営課題 ~ 商品力低下、人材の能力低下と評価制度 ~
近年は、ブランドの陳腐化、大衆化が進んでいるとの指摘もあり、特にケーキがトレンドや顧客ニーズとのズレがあるように思われます。
また、従業員のレベルアップがなかなか図れていないことや、従業員の評価への不満が増えていることも問題になってきています。
新店出店を機会に、この2点に取り組みたいと考えています。<商品開発をこのように進めました。>
1.どんなデータから?
商品について顧客の声を聞くには、試食してもらう、グループインタビューで意見を言ってもらう等様々な方法がありますが、重要なのは、顧客の声を正しく反映できる方法を選ぶことです。
ポイントは「質問の仕方」です。
やみくもに試作品を作って意見を聞いていては、いくら作ってもきりがありません。そこで、まず新商品を構成する要素をいくつか決め「その要素への顧客の意見をまんべんなく調べるには、何種類の商品を評価してもらえば良いか」を調べます。こうすることで、やたら多くの商品を調べることなく、効率的に調べることができるのです。
これには顧客アンケートでのデータ収集と、コンジョイント分析という方法を用います。
2.何がわかる?
新商品の要素で選んだのは、従業員等を交えた議論の結果、次の7項目でした。
甘さ、 スポンジ、クリーム、デコレーション、カロリー、原料、価格
そして、それぞれの項目で2つのレベルを設けました。
顧客がこれらの7項目からなるケーキをどう評価するか知る為には、項目をバラバラに聞くのではなく、1つの商品として組み合わされた状態で聞くべきです。
ところが、組み合わせをすべて考えるといくつになるでしょうか?答えは「128種類」です。
これだけの種類について調べることは不可能といっていいでしょう。そこで、もっと少ない種類の商品だけについて質問すれば128種類を調べたのと同じ効果が得られるような構成の商品を考えます。これは直交表というツールを使って調べ、8種類の商品で良いという結果が出ます。(表1、表2)
そしてこの8種類についてアンケートを行い分析した結果、顧客が最も重視しているのは、甘さとカロリーということがわかりました。(表3、グラフ)
3.どう活かす?
この調査から得られた新商品の仮説は
ケーキらしい甘さでカロリーが低い商品なら、価格はそれほどこだわらない
これで、顧客が重視する項目を満たす新商品開発の基本コンセプトができました。
ただし、当初の7項目の要素は十分検討を重ねることが必要です。これ次第で質問内容が異なり顧客から引き出す回答も変わる為です。
ある公開調査(下図)では、女性がスイーツに求めるものとして「スイーツ感を感じる甘さ」は上位にきており、今回の分析結果と一致していますが、カロリーについてはあまり重視されておらず分析結果と矛盾しています。
これは、そもそも一般的には重視されていない項目を当初の商品の構成要素とした為に、それを質問した結果、顧客ニーズとして誇張されて引き出されてしまった可能性を示唆しています。そもそもカロリーを含めなくてもよかったのではないか?ということです。
ここから言えるのは、顧客アンケートを実施する前にはプレ調査としてこのような公開データを調べてみた方が良いということです。このようなデータを参考にしながら商品の要素と質問項目を検討していけば、より顧客ニーズを引き出せる調査を行うことができるでしょう。
(出典)ネオマーケティング 「夏のスイーツ」に関する調査
2014年 20歳~39歳の男女400名を対象