簡単にできる商圏調査-事例から学ぶ(都市近郊立地1)

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出店の成功に欠かせない商圏分析ですが、ポイントを理解していれば決して難しくありません。
ここでご紹介する事例を参考に、これから出店を考えているならば、ぜひチャレンジしてみましょう。店をオープンさせる当事者である方が直接行うことは、商圏内市場の理解度を高め、店の運営に大きなプラスとなります。

唯一気をつけることは「客観的になれるか」ということだけです。物件を探す期間があまりなかったり、思い入れの強い場所であったりすると、物件ありきで進んでしまい商圏を見る目が偏ることもあります。これを防ぐには、外部業者への依頼は有効ですがコストがかかります。
特に資金調達が厳しい独立開業では、少しでも店舗に費用を回す為、なるべく自分で実施したうえで出店で利害関係のない身近な知人や友人の意見も求めてみるのが良いでしょう。

ここでご紹介する事例は『出店の成功に欠かせない商圏分析を簡単に行う方法』でご紹介している方法に基づいた、商圏分析の結果です。


詳細な調査分析は省いていますが、必要なポイトを押さえた、商圏を把握するうえで実用上問題の無い結果レポートです。この程度の結論を導くつもりで商圏調査に取り組んでみてください。

事例 都市近郊立地商圏

商圏マップ(競合分布、実勢商圏設定)

商圏 近郊1a

商圏マップ(商圏人口、世帯数)

商圏 近郊1b

商圏状況

出店候補地付近は、駅前から広がる、店舗と住居が混在した地区で、道路や町並みが整備された閑静なロケーションである。 駅近くで店舗も多いが、込み入った街区が少なく、近隣からの徒歩、自転車での来店は容易である。
また、周辺の主要な道路は、生活道路として程よい交通量がありスムーズに流れているため、自動車によるアクセスもし易い。駅や駅周辺を行き来する消費者に認知させやすい立地が可能な地区といえる。

この地区でベーカリー店を営業する際の基本的な商圏は半径500m~半径1km迄とし、道路、鉄道、河川、競合等を考慮して実勢商圏を設定する。

  • エリア(北)
    山手から下る人の流れはあるが、隣駅の競合店や入り組んだ道路によるアクセスのし辛さから、商圏は狭めの700m~1kmで設定する。
  • エリア(南)
    アクセスは容易ではあるが、隣駅への人の流れと競合状況から、商圏は700m~1kmと狭めに設定する。
  • エリア(東)
    私鉄線と駅が商圏分断要因となり、人の流れは制限されると考えられる。商圏は700m~1kmで設定する。
  • エリア(西)
    山手から海手方面へ人が流れ易く、アクセスも容易である。商圏は1~1.5km程度と広めに設定する。

この結果、実勢商圏は、人口が32,093人、世帯数が12,682世帯、ベーカリーの市場規模※は年間3億3206万円となる。
※市場規模=世帯数×26,184円(京阪神の1世帯あたり年間ベーカリー消費支出額平均)

競合状況

候補地に近い半径500m内のベーカリー店は4店舗で、商圏周辺までを含めると9店舗となる。
これら競合店のうち、特に留意すべきなのは、商品力の強さからビゴの店甲陽園店、近隣立地という点から(H)(B)となる。

  • 競合店(H)
    商品は100アイテム以上、テーブル席併設。商品力の強さから集客力は強いと見られる。周辺客は確実に取り込んでおり、アクセスは良くないものの車客でも集客できていると考えられる。
  • 競合店(B)
    スーパーの裏に立地。規模は小さいものの商品は60アイテム程度でしっかりと品揃えされており、リピーター顧客と、イカリスーパーのついで買い需要客を固く確保していると見られる。
  • 競合店(A)(E)
    商品は特に特徴はなく、店舗内外装も特筆すべきものではないが、駅前という立地の良さから乗降客中心に集客していると見られる。
  • その他
    (C)は、内外装ともに古く、商品に魅力もない。アクセスもしづらく、集客は極めて限られていると見られる。
    (D)は、スーパー内インショップとして来店客の購買を獲得している。
    (F)、(G)は、高架下の店舗で商品力は弱く、周辺の狭い地区からの集客と見られる。
    (I)は、ベーカリーの品揃えは豊富ではないが、洋菓子併売店としての集客力、スーパー傍という立地によって十分な顧客を獲得していると見られる。

出店候補地の評価

候補地区は、周辺が整備され閑静なベーカリー店の出店に適したロケーションといえる。様々な分断要因により商圏は限定され周辺に強い競合店も存在するが、十分な市場規模を有しおり新規参入余地はある。
物件(立地)と商品力次第では、商圏内シェア30%で1億円程度の売上を獲得することは十分可能と考えられる。

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